7. 母は夜なべをするために、毎晩おとぎ話をして子どもを寝かしつけた

夕食が終わると、母は私達子どもを寝かせるため、毎晩日本のおとぎ話をしてくれた。この時間になると母は服を着たまま、私達と一緒に布団に入って、桃太郎やさるかに合戦などの話をしてくれた。私にはこの時間がとても待ち遠しかった。すでに、何度も聞いた話で筋書きを知っているのだが、何度聞いても私は飽きなかった。二つくらいの話が終わると、妹や弟達は寝入っていたが、私はもっとお話ししてと母にねだった。このわずかな時間は、私にとって母を一番みじかに感じられる時間だったからだと思う。

一方、母は子ども達を早く寝かせてから、自分が寝るまでのわずかな時間、やるべきことがいくつもあったのだ。いわゆる夜なべ仕事である。この時間に母は育ち盛りの子どもたちのセーターを編んだり、自分の着物を私や妹のために洋服に仕立て直していた。

父も夕飯後、急ぎの仕事があれば残業することもあったし、母は四六時中何かをやっていたので、私は、両親が就寝する様子を見た記憶が無い。

« 前へ戻る   » 続きを読む