3. 物乞い幼い姉妹がやって来た

しかし、まだ羽田の町には戦争の傷跡から立ち上がれない人達も少なくなかった。そして、そのしわ寄せは、弱い子どもに向けられることが多かった。

ある時、わが家に髪の毛がボサボサで、汚れた顔に裸足の幼い姉妹がやって来た。姉妹はボロのようなものをまとっていて、目だけが光っていた。二人は私や妹と同じくらいの年齢にみえた。母が出てみると、姉らしい方が「パンツをくれ」と言う。母は事情が飲み込めずぽかんとしていた。姉らしい子が「パンツをくれ」と繰り返すので、母は二人が物乞いに来たことに気づいて、おにぎりを2個持たせて帰した。その後、時々この姉妹がやって来るようになり、いつも姉が「パンツをくれ」と言うのであった。母はわずかなお金を渡すこともあった。姉妹は戦争孤児だったと思う。

私は、後年映画をよく観るようになり、外国のニュース映画で、戦争のため家を破壊され子どもたちが逃げ惑うを場面を何度も観た。そのシーンは私がみた家に物乞いに来ていた姉妹とよく似ていた。

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